気骨のコレクター、故河原井源次氏

 

河原井氏の自伝’気骨のコレクター’からの抜粋です

一期一会

地域文化の振興のため、永年にわたり蒐集したコレクションを、広く桐生市民に無償で公開展示したり、公共施設に寄贈して自然と文化の街桐生をめざして’俺は、あした死んじゃうかも知れない’が口ぐせであった。蒐集したものは、刀、書画、陶磁器以外なら他の蒐集家が目に付かなかったもの、たとえばポスター、チラシ、江戸から明治にかけての古い看板、カメラ、蓄音機等で、約10万点、10分類がある。

町おこしの仕掛け人の草分け的存在でもあり、氏の発案による毎月第一土曜日に開かれる天満宮境内の骨董市は、関東一円の業者が出店し、それを見学したり品探しする客は毎回1万人を超える。

氏のコレクションで最も有名なのはアンティックカメラで、その数1300台、明治時代の組み立て暗箱、アメリカ製三号パノラム・コダックをはじめ、5号コダック・サーキットカメラ、マシンガン・カメラ、小西六の八九式活動写真銃などの珍品もある。

 

桐葉楽団

若き日の河原井氏は戦中には桐葉楽団をつくり、陸軍病院や軍需工場の慰問演奏に明け暮れ、戦後は桐生素人のど自慢のグループから、コロンビア・ローズや朝倉ユリが誕生し、中央で歌手としてデビューを果たすと、後援会を組織して声援を送ったという。

 

氏のコレクションはもちろん蓄音機とレコードにもおよんだが、蓄音機のほとんどは寄贈または人手にわたり、現存するものは少ない。我々北関東蓄音機倶楽部が氏の愛器、EMGマーク9号のメンテナンスを任されたのはまことに名誉なことであり、我々の活動が氏の生前の功績をたたえる一助になれば幸甚である。